⭐ 「メカニックデザイナーの仕事論」
大河原邦男 P21
~私はアニメの世界だけで通用するものではなく、現実に変形も合体もできる「嘘のないメカデザイン」を目指したのです~
横浜で行われている実物大ガンダムの展示が来年で終了すると聞いて、本書を読み返している。この言葉が強く印象に残っていたから。
アニメのメカがこんなに緻密に設計されているなんて、当時のぼくには、思いもよらなかった。
「ガンダム」のデザインが完成するまでの、安彦良和さんとのやり取りが面白い。一歩間違っていたらガンダムの顔は......
この妥協のない仕事があっての実物大ガンダム。そしてこの中に描かれている様々なメカは、資金さえあれば、理論的には再現が可能なんだ。
大河原さんの仕事は今も尚、ぼたくたちに壮大な夢を与え続けてくれている。
P46上段のキャラクターデザインを見てよ。美しい!芸術だ!「タイムボカン」は、昆虫だって大好きだった少年時代のぼくたちの心を鷲掴み。
⭐ 「始まりの木」夏川草介 P187
~これ......、木なんですね~
この小説のハイライトは、こんな簡潔なひとことに。
民俗学という難しいテーマを、これほど興味深く読ませる本は、他にないよ。ひとつのエピソードが終わるたびに、深~いため息が出て、更に次が読みたくなる。「そうだ、京都に行こう」みたいな気分にも させてくれる。
「始まりの木」が主人公の目の前に現れるこの場面。文庫本のカバーに描かれている緑が、更にひとまわり大きくなって読み手に迫ってくる。
昨今、いろいろなところで「日本が失われる」という危機感が叫ばれているけど、その根っこになる大事なものが、この物語の中にあると思う。
2023 12 6