ヤマモモの木
新聞の投稿欄に「ヤマモモ」の字を見つける。我が家にも昔あったんだよ、山桃の木が。覚えているのは、固い梅干しのような実の独特の食感と、当たり外れのある甘酸っぱい味。そしてこんな出来事。
山桃は立派に育って、子供たちの遊び場に適していた。木登りって遊んでいるうちに足を掛けるルートがだいたい決まってくる。うちの場合、1メートルのところが初心者、一番上まで行けば、隣の二階家の窓くらいまで到達できた。
ぼくは自分の家の敷地なのに初心者止まりなのが悔しくて、ある日一番上まで登ることを決意する。
上へ行くほど枝は細くなり足場は不安定に。そしてお決まりのように、バランスを崩して落下。この高さを頭から落ちたらさすがにただでは済まない、と瞬時に思ったけれど。
奇跡的にいつも初心者コースの足場にしていた太い枝に半ズボン(昔は短パンではなく)が引っ掛かって命拾いした。
宙吊りになって見た地面の芝生、何事もなかったように静かな時間が流れていた。
翌日チャレンジ再開。一回落ちたことで、むしろ怖さを克服した感があった。怖くなければ足腰はしっかりと定まってきて、ついに目標地点に到達。
まだ建物が少なく、一面の田んぼから遠くの山々まで見渡せた景色。鳥が行き交ったりして、静かな時間が流れていた。
2023 9 28
