⭐「一瞬の風になれ 3 ドン」 佐藤多佳子
P255
~それは突然だった。ほんとに突然やってきた。自分でも理解できなかった~
高校の陸上部を描いた小説三部作の最終巻。
短距離種目がメインの物語だけど、ぼくの中ではこのシーンが断トツで好き。なぜなら、レベルは全然違うけど同じ経験をしたことがあるから。
400mのラスト100mで足が止まる。それも普段のレースとは別次元のガス欠。当時、同僚にうまく伝えられなかったことが、ここに全部書いてある。
この物語に触れた陸上部出身者は、自分のやっていた種目によってそれぞれに、思い入れの強い場面が違うはず。
そしてぼくは、読み返す度に青春時代へ フラッシュバック。
⭐「嫌われた監督」鈴木忠平 P289~293
~この道を進んで行けばいいんだと
確信できた瞬間だった。~
落合ドラゴンズの申し子のひとり、吉見一起の投球スタイルはどうやって確立されたかが、克明に記されている。
速球派からコントロール重視に変わったという、単純な話ではない。むしろそれらは少年時代からの鍛練で既に備わっていたみたい。問題はプロの世界でどれをどう活かしていくか。
落合監督、森繁コーチ、谷繁選手の助言を自分なりに解釈し、ピッチング意外のところから活路を見いだしていく吉見投手。130㌔代の球速で試合全体を支配していく。
延長12回128球を投げ抜いたDNA戦。落合監督との固い握手で自信は確信になり、吉見投手はエースへの道を歩み始める。
2023 6 5