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155 本の・少し

   「冷たい密室と博士たち」森 博嗣
  
 もう何回目の「Fシリーズ」体験になるだろうか。またまた「冷たい密室と博士たち」を読み始めてしまった。他シリーズに枝分かれした作品の全貌は未だに掴めないけれど、だからこそ長く楽しめる、なんて思いながら。

 森さんの説明によると、本来は「冷たい密...」がシリーズ 第一作目になるはずだった。
 出版社の意向で先に発売された「すべてがFになる」は、高い壁となってぼくの前に立ちはだかることになる。何せのっけから永遠と謎の会話(もちろん後々最重要な会話と分かる)だけが続くものだから、ミステリ小説初心者だったぼくは、何回も挫折しそうになった。それでも何かの拍子にまた手に取って、あの分厚い一冊を完走するに至り、その後はすっかり森ワールドに魅了されてしまう。

 もしあそこで挫折したままだったら、ぼくの大好きな「冷たい...」冒頭のシーンに出会うこともなかった。

~ 人間の本当の能力とは、問題を作ること。何が問題なのかを発見することだ。したがって、試験で問題を出すという行為は、解答者を試すものではない。試験で問われているのは、問題提出者の方である。どれだけの人間が、そのことに気がついているだろう。 ~

 まるで(当時は自身も大学の先生だった)森さんの胸のうちを描写したかのようで、読み返す度に唸ってしまう。そしてこの後の、フッと緩んでいく展開がまた楽しい。

 これから先も、初めて森作品に触れる人たちがいるでしょう。彼らの大変な労力のことを思うと...それはそれで羨ましい。
2023 2 17