⭐「本日は、お日柄もよく」原田マハ P95
~ 口から、自然に、言葉がすべり出した。
不思議なことに、そのあとは、もう
立ち止まらなかった。~
まず「スピーチ」を題材にしたことが凄いと思う。プロの作家であっても、「スベるかも」って思いそうじゃん。確かな技術と緻密な取材により、自信を持って書いたのでは、と想像します。書店でよく平積みの「原田マハ」を見かけるのもうなずける。
そして展開が早い。主人公がこの一冊をかけて、スピーチの極意を学び、友人の披露宴でその成果を発揮する、という ぼくのもくろみ?!はあっけなく崩れさる。上の場面は序盤の序盤。楽しみはまだまだ続く。
⭐「八月の御所グラウンド」万城目学 P55
~ 「あいつら、本物かもよ」 ~
万城目さんの小説を読むのはこれが初めて。直木賞受賞作の「八月の御所グラウンド」と一緒に収められているのが、「十二月の都大路上下ル」。
補欠のはずが、全国高校駅伝を走るはことになった主人公。大会本番では新撰組の亡霊たちと並走することに。
著者はインタビューで、この短編の為に、田中希実さんを取材したと語っていた。その成果は大会の前日と翌日の描写にも注がれている。大会本番では各選手の佇まいやレースの細かい駆け引きなど、テレビ中継だけでは得られない情報量が、更にレースを盛り上げる。
そしてスポーツ小説でありながら、羽目の外し方が絶妙。
ああ、面白かった。
たった今、読み始めた「八月の御所グラウンド」から過去作へ。ボリュームが増すごとに万城目さんの世界観にハマっていく予感。
2024 3 2