188 ひとりごと
釣りばっか日誌
今年は天竜川の鮎の遡上が例年に比べて良好と、明るいニュース。
昭和のお父さんはみんな釣り好きだった。うちの親父も仕事前、仕事後まで釣竿をたらしていたぐらいで。
また昔は環境にも恵まれていた。わざわざ出掛けていかなくても、家の前の用水には鮒鮠鯰、季節になれば天竜川から鮎や鰻まで流れ込んできて大盛況。釣り堀の意味なんて分からなかったくらいで。
あるときは、親父が 近所のただ 枡みたいに囲ってあった ため池の中から巨大な鯉を釣り上げて度肝を抜かれた。親父が天竜川の本流へ釣りに出掛ければ、数十匹の鮎を当たり前のように釣ってくるのが楽しみだった。
ぼくが初めて釣りをした時のこともよく覚えている。まず親父に手本を見せてもらった。
「最初は魚が餌をつついているだけだから、ウキが動いても、竿をあげるな。そのうち魚が餌を丸飲みして、ウキが一気に沈むからそのタイミングを狙え」と。
ぼくが竿を凝視していると、ウキはゆっくり、ゆっくりと沈んでいく。バカ正直だったぼくは きっかけを失い、
「こういう場合はどうすればいいんだろう?」
親父「ウキはどうした?」
ぼく「今、沈んでる」
親父「バカ!上げろ上げろ!」
初めての釣果は何と亀。嬉しさと物珍しさが入り交じって、しばらく玄関で飼ってたなぁ。
こんなこともあった。小学生の時、友だち3人 自転車で川へ釣りに出掛けた。この日は鯉が入れ食い状態で、絶好調というより気持ち悪いくらい。釣ってはリリース釣ってはリリース釣ってはリリースっつって。
初心者だった友だちの1人は
「釣りなんてチョロいもんじゃん」
とすっかり調子に乗っていたが、ぼくはある新聞記事で事の真相を知ることになる。
環境保護を目的に市が大量の鯉をその川へ放流した、とのこと。結局友だちにはそのことを言えず終いだったけど。
そうやって釣りを楽しんでいた昔の川は、何処もコンクリートの側溝が入ってしまって、すっかり魚を見かけなくなった。今の子どもたちは川を上から眺めて、葉っぱだと思っていたら魚だった、なんて経験も出来ないのね。
2023 5 27