記録と記憶
新聞記事の中にカール・ルイスの名前を見つけた。懐かしい。
今の若い人は、男子100Mといえば現世界記録保持者のウサイン・ボルトの印象が強いと思うが、昭和世代のぼくにとって、カール・ルイスの活躍はそれに負けないくらい強烈だった。
ウサイン・ボルトのひとつ前の世界記録保持者が同じジャマイカ勢のアサファ・パウエル。彼が世界新を更新した時、まだしばらくはパウエルの時代が続くものだと思っていた。
しかし、彼はオリンピックや世界陸上での優勝は叶わず。
短いスパンでのボルトの登場が、同僚でもあるパウエルのプレッシャーになってしまった印象がある。あまりに早い世代交代。
遡って、カール・ルイスの時代にも同じ米国のライバルとして、次世代のリーロイ・バレルが台頭してくる。
ルイスの持っていた世界記録もバレルに破られ、その年(1991年)に東京で行われた世界陸上が彼らの世代交代の舞台となるはずだった。
事実、予選、準決ではバレル好調、決勝ではルイス苦戦か、のアナウンス。
しかし、期待と寂しさが入り交じった決勝でぼくらはとんでもない記録を目撃することになる。
「き ゅ う び ょ う は ち ろ く!
ルイス世界新記録!」
喜びを爆発させるルイス、驚愕の表情のバレル、「ヘイ、ルイス」とはしゃぐ番組サポーターの長嶋茂雄さん。
30年以上たった今でも記憶は鮮明だ。
記録の面でもバレルが樹立した世界記録を同じ年に大幅更新。時の人となった。
ルイスはこの他にもドーピング処分を受けたベンジョンソンとの死闘や、日本のバラエティー番組に「カール君」なるキャラクターまで登場するなど、話題に事欠かない存在だった。
近年の日本の短距離界の躍進は、目を見張るものがあるけど、ルイスの記録に追い付くには、もう少し時間が掛かりそう。
2023 3 18