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119 本の・少し

    「この素晴らしき世界」

 東野幸治さんが、吉本芸人31人をいじり倒すエッセイ集。

 一日一人ずつ読むもよし、一気読みもよし。表も裏も知り尽くした東野さん独特の視線に、登場人物が晒されていく様はちょっとほろ苦く、でもやっぱり笑っちゃう。そして、こう思わずにはいられない。「お笑いの世界って、どんだけ危なっかしいバランスで成り立っているんだ」。

 綾部さんがアメリカへ渡ったときは、誰もが「そんなに甘い世界じゃないよ」と、思ったはず。でもその認識は間違い。そもそも本人は計画もなく、ただ行っただけなんだから。 憧れと勢いでアメリカの生活が成立してしまい、我々凡人が「なんでやねん」とツッコミを入れたくなる状況を綾部さんは満喫している模様。

 31人の中には「真面目な芸人」も何人か登場するけど、真面目も度を過ぎると狂気になる。大助花子さんのエピソードでは狂気の凄みを見た。笑いを追及する過程がこんなに壮絶でいいのか?ダウンタウンとの関係性、エピソードがまた素敵。紫綬褒章受賞までの道のりはこの本のハイライトのひとつ。

 解説の中のエピソードで登場するのが麒麟の川島さん。相方の本が売れに売れて、影が薄かった時期に、東野さんに助けられたという。ぼくは個人的に「麒麟です」ってダンディーな声で自己紹介していた頃の川島さんはあまり好きになれなくて、今の切れ味鋭いトークの川島さんからファンになったくち。川島さんの才能を見抜いて彼を支えた東野さんに感謝。

 今日もページを捲れば、東野さんのあのガラガラ声が聞こえてくる。もしこの本がヒットすれば、WコウジでなくW東野と呼ばれる日も遠くない、チャンチャン。

2022  10  19