「コロナとバカ」 ビートたけし
週刊誌の連載を文庫化したエッセイ集。コロナ禍という特別な状況もあって、たけしさんの筆にも、いつもと違う力が入る。
時事ネタを扱った切れ味鋭い毒舌は笑いながら読み進める。しかし油断していると、ところどころにちりばめられている物事の核心をついたコメントに、ドキッとさせられる。先に逝ってしまった芸能界の友人について語る時、自身の老いと死の向き合い方などを語る時には、その眼差しに、こちらが射ぬかれているような気持ちになる。
とくに刺さったのはピアノと小説のことを語っているP98、99のくだり。
「他人からの評価じゃなく、自分が決めたところに向かっていく。それが生きていく理由になる。」
「絶望している暇はない。」
「どんなに小さなことだって構わない。自分の中でコツコツ積み重ねていくこと。」
あのたけしさんがこういうことを真剣に考えている、そこに重みを感じてしまうのだ。
2022 1 4